しかし男の口から出たのは、絢也の予想を遥かに上回る言葉。
「そ。高等部卒業までの全学費免除」
「学費、免除…?」
所謂特待生のような扱いになると男は言う。
有り得ない。そんなこと絶対に有り得ない。
そう思いながらも、その言葉を聞いて一番に頭に浮かんだのはとても大切な人。
どんなに仕事が大変でも、いつも笑って背中を押してくれる母の姿だった。
高等部卒業まで免除ということは、絢也の場合今から五年も学費がかからないということ。
それが如何に家庭の生活を守るものか。
それは考えなくともわかる。
(…母さん…)
絢也はいつも思っていた。
少しでもあの人の力になりたいと。
女一人で頑張るあの人を支えたいと。


