俯いてしまったその顔には、とても十二歳とは思えないような深いしわがきっちりと刻まれていて。
これには流石の男も笑うしかない。
そんな珍しくあからさまに落ち込む絢也に困ったように笑ったまま、男はポツリと呟いた。
リタイアは出来るみたいだけど、と。
その言葉に、絢也はパッと俯いていた顔を上げる。
逃げる希望を見つけたと言わんばかりに。
本当ですか、と出そうになる期待の滲む声。
しかしその視線の先にあった男の表情に、喉元まででかかった言葉を飲み込んだ。
その瞳の奥に僅かな、それでいて深い悲しみの色が見えた気がしたから。
しかしその憂いの瞳は一瞬で姿を消し、次の瞬間にはまた柔らかな笑みが男の顔に浮かぶ。


