雨が纏う独特な匂いが肌に絡み付き、空からは涙のように雫が落ちる六月中旬。


私立・和泉原学園の一室は緊張した雰囲気に包まれていた。



広い校内にある生徒指導室と書かれた一つの部屋。

その響きだけで、生徒は近寄るのを躊躇ってしまうような場所。


そんな部屋の前にそびえ立つ重厚な扉の向こうで、十数人の大人たちがたくさんの書類の山と対峙していた。

八割が男性であるその空間は、ただでさえ重苦しいその空気を更に重くしているように見える。


山積みになった書類には顔写真とともに事細かなプロフィールが記載されていて。

主な内容は生活態度や部活動の記録などのようだ。


さながら入試前のような光景だが、勿論そんなわけはない。