「あの子たちも、もう立派な大人じゃのう」
「俺も年を取るわけですよ」
老人の言葉に龍野の瞳には懐かしさや暖かい光が浮かんでいて。
まるで我が子を愛するような、慈しむようなその瞳。
初めて見るその色に、佐藤は思わず息を呑む。
どうやら周りの人間もその変化に気付いたらしく、皆が物珍しそうに彼に視線を向けていた。
新垣に至っては、有り得ないと言いたげな表情である。
そんななかで相変わらず老人とその隣に座る女だけが、龍野を嬉しそうな眼差しで見つめていた。
向けられた幾つもの視線に気付いた龍野が、ぎゅっと眉を寄せる。
瞬間、パッと離れていった前の二人以外の視線。
それに溜め息を吐きながら、龍野はゆっくり口を開いた。


