最後の愛コトバ。

「まぁこの容姿だから間違えられることありますけど…。」

「だってハルちゃん!僕、カナメの老け顔見慣れてたから~。」

カナメは少年のような顔立ちだが、どこか大人っぽかった。

一見すると綺麗なお姉さま。

「誰が老け顔ですか!ハルと比べないでください。ハルが幼すぎるんです!」

と、拭いていたハルの頭からタオルを離し、ペチンとハルのおでこをはたいた。

「…った!こんなカナメみたいな女子もいません!最初は男の子だと思ったもん。」

そう、カナメはれっきとした女だった。

170はあるであろう長身に、化粧っ気全くない顔、ショートヘアにモデルのようなスタイル。

ちょっと着飾るだけで、スカウトが来そうなほどだ。

「なんで化粧しないの?カナメなら、モデルにだってなれちゃうよ?」

ぐしゃぐしゃにされた髪を手ぐしで整えながら、カナメの目を見つめるハル。

カナメは目線をずらし、バツの悪そうな声で、「めんどくさいんだよ…。」とつぶやいた。

「ハ、ハルちゃん、僕も若いころモデルしてたんだよ~。」

店長が間を割ってハルにお通しを出しながら言った。

「そうなんですか!タケルさん、イケメンですもんね!」

「そうそう写真見る?」

「見たーい!!」

両手をあげてはしゃぐハルを横目にカナメが表情を暗くしていた。




(本当は僕…男なんだよ…ハル…)