「柚っ!!」
母さんを無視して男を睨み付けた。
「…アンタ、母さんを弄んでんのか」
「そんなことないよ。僕は本当に美佳さんが好きなんだ」
「始めは好きだの愛してるだのと言い回るが後から冷めていくんだろ」
「これからも愛し続けるよ。絶対」
「どこにそんな自信がある?その偽者みたいな笑顔の裏か?その安っぽい言葉の裏か」
「やめなさい柚!!」
「裏もなにもない。本心だ。本当に僕はこの人と一緒にいたい」
真剣な目。真剣な表情。真剣な口振り。
母さんと一緒にいたい気持ちは伝わってくるが、裏がある気がしてならない。
「夫として、君のお父さんとしてこの先生きていたいんだ」
「…っ!アンタ俺がどれだけ"お父さん"が、母さんが"夫"という存在がどんだけ嫌なものなのか知ってんのかよ!!」
「知ってるよ。その上で言ってるんだ」
「!」
なんだ。ていうことは母さんは許したというのか。
"夫"の存在を。"お父さん"の存在を。
受け入れるというのか。
「……認めない」
「……」
「俺は認めない。どれだけいい人だろうが悪い人だろうが、俺は"お父さん"が嫌いだから。」
手を離し背を向ける。
部屋に戻ろう。こんな場所にいたくない。
「結婚すんなら俺が社会人になってからにしてくれ。そのときには俺、縁を切る」
「…ッ!!柚なにを…!」
「本気だから。」
そう言い残しリビングから出た。
ムカつく。母さんにとってあの事はそんなもんだったのか。
悲しいのとムカつきが混ざりあって言葉にできない。
あーもう。本当死ねばいい。
いっそこの手で殺してしまおうか。
そんなことしたら母さんが悲しむかな。