―――七年前。

そこには幻想があった。
誰もが惹かれ、その世界に酔いしれる。

大して広くもない酒場に、光が木漏れ、自然に癒される。
吹くはずのない風が心地良く、如何なる者も沈静し、ただその場に佇む。

こんな都会にあるはずのないその風景。
聞こえるはずのない川のせせらぎ。


「今宵、皆様を魔法の世界に案内しましょう」


幾度となく争いに使われていたはずの力で恐れていた人々に、彼は言った。
だが、その力に、ここにいる皆は酔いしれる。

その時、こんな力の使い方があったなんて誰が思っただろうか。

この時間が永久に続く事を、誰もが望んだだろう。
だからこそ、現実に目覚めても、彼等は、求めた。


『もう一度、その世界へと連れて行って』

と…。