「ふぅん。で、アンタはずっと諦めてきたわけ?」

「詩音!!」

「優真はちょっと黙ってなよ。アンタさ、自分で何かしたことがあるの?」




詩音の朔妃へ向ける目は冷たい。
俺達と会ったばかりの目によく似ている。
詩音は実の親に虐待を受けていた。詳しいことは俺達も知らないが、詩音は助けを求めることを諦めていた。だから詩音は諦める奴を人一倍嫌ってる。




「…ま、俺達に迷惑を掛けなければどうでもいいや」




詩音は冷たくそう言い放つと立ち止まることなく屋上を出て行った。

詩音が出て行ってすぐに迷惑なのかな、と落ち込む朔妃に俺と優真は同時に頭と背中を撫でた。




「大丈夫だ、迷惑なんかじゃない」

「詩音が言ったことは気にしないで?あいつはああいうやつなんだ」




朔妃の背中を撫でる優真に苛立ちを覚えた俺は睨みを効かせて優真の手を払いのける。




(朔妃に触るな…。こいつに触れていいのは俺だけだ)




「痛っ、いきなり何すんだよ?」

「お前女嫌いだろ…」

「どういうわけか朔妃ちゃんは平気なんだよね~」

「チッ、こいつに触んな…」

「お、もしかして嫉妬か~?」

「……?なんで俺が嫉妬するんだよ…」

「(こいつわかってねぇのかよ…)いや~、我らが総長様にもやっと春が来たみたいだな」




と意味不明な発言をする優真を放っておいて俺は考えた。




(嫉妬…。俺が、優真に…?朔妃に、触ったから…?でもなんで俺が嫉妬なんか…)