「……美味い」




昼飯の時間、優真を通して朔妃からもらった卵焼き。
それは本当に美味かった。




俺は結構味にうるさい。だから俺が誰かの料理を気に入ることは滅多にない。
その俺が気に入った。
ヤバいな。昨日からこいつが気になっていたが本当に気に入ってしまった。
やっぱり傍に置いておきたいな。





「朔妃ちゃんは、料理とか習ってたの?」

「あー、うん。一応」




優真が訪ねたとき、朔妃の表情が曇った。
優真もそれに気付いて罰が悪い顔をする。




それに気付かなかった薫が他にも習っていたのかと尋ねれば




「えーと、華道に茶道に書道にピアノにバイオリン、フランス語を含む三ヶ国語でしょ、剣道に柔道、あと弓道と…」




と色々挙げだした。




「もういい、もういい!!」




挙げ続ける朔妃に薫が遮って止める。




「お前、苦労してきたんだな…」

「別に?逆らっても無駄だってことは子供のあたしでもわかってたから」




朔妃が自嘲的に笑った。
…こいつは一体過去に何があったんだ?