雷獣は猫がお好きなようです

「…大丈夫か」




鼻血を出して気絶している男に近寄ろうか思案していたとき、あたしの正面から低い、だけど心地いい声が聞こえた。




驚いてバッと顔を上げるとさっきの黒髪の男があたしを見下ろしていた。




紫の目をした黒髪の男の目を見た瞬間、目が逸らせなくなった。




(なんて、綺麗な瞳……。…引き寄せられて、目が離せない……)




射るような、それでいてどこか寂しさを潜めるその切れ長の目に、魅せられた。




「…大丈夫か」




再び問う男の声にあたしは我に返り目を逸らした。




「あ、大丈夫です!!」




先程の余韻のせいか、声が上擦ってしまった。




「…そうか」




と言ってそれきり黙りこくる男に、あたしは俯いた。




俯いたとき、私の目に完全に溶けたアイスが目に入った。




(ん?アイス?…溶けたアイス??)




「あぁっ!!」




いきなり声を上げるあたしに、男は肩をビクつかせた。