朔妃が屋上を出て気配がなくなったのを確認すると、俺は目付きを変えた。
それをこいつらは察したのか、穏やかだった雰囲気がピンとはったものに変わる。




「玲衣、朔妃ちゃんを鳴神の姫にする気か?」




優真が朔妃の前では出さなかった低い声で聞いてくる。




「………」




俺の沈黙を肯定ととったのか、優真はため息を吐いた。




「いくら男を背負い投げ出来るからといって、朔妃ちゃんは女だ。危険過ぎる」

「…それでも、俺はあいつに傍にいて欲しい」




俺の絞り出したような言葉に、それを聞いた5人は言葉を無くして驚いた。




「まだ朔妃を鳴神に紹介はしない。今はまだ時期じゃない。薫、とりあえず今はお前が朔妃を守れ」




今はまだ時期じゃない。最近水面下で動いているある族を潰さない限り、朔妃を正式に鳴神の姫には出来ない。




「…り、了解っス!!」




薫は背筋を伸ばして敬礼する。




早く、片付けないとな…。
そうすれば、正式に鳴神の姫にして、俺の傍においておける…。




俺は朔妃が戻ってくるまで、頭から朔妃のことが離れなかった。