雷獣は猫がお好きなようです

「この女…っ!!調子にのりやがって…!!」

「調子に乗ってんのはどっちよ!?ケンカに部外者を巻き込まないでくれる!?」




俺が再び男と女に目を向けると一触即発な空気だった。




あの女に傷を付けられたら堪ったものじゃない。




(ついでだからあの顔面どっかにぶつけてやるか…)




俺は後ろから男に近付き、側にある木に顔面が当たるように狙いを定めて男を蹴飛ばした。




「…あれ?」




急に自分の視界から消えた男を探す女は正面にいる俺を見ることなく辺りをキョロキョロしていた。




そして男を見つけるとじっと男を見ていた。




「…大丈夫か」




俺がそう声をかけると女は今俺に気付いたかのように勢いよく顔を上げた。




女と目が合った瞬間、その世の汚れを知らないような目に見入った。




(なんて純粋な瞳なんだ…、引き込まれる……)




女も俺を見つめる。
時間が止まったような感覚さえした。




「…大丈夫か」




俺はこの女の声が聞きたくて、気付いたらもう一度問うていた。




「あ、大丈夫です!!」

「…そうか」




女の上擦った声にやはり怖かったのだと感じさせられた。




普通の生活をしていれば、ナイフを向けられるようなことはまずあり得ないのだから。




「あぁっ!!」




女の上げる声に、思考に浸っていた俺は無理矢理覚醒させられた。




肩が跳ねたのは、しょうがないと思う。