『ねぇ竜くん、舞華ちゃんってかわいそうだよね』

『うん、かわいそうだね』


_______……………


「やっぱ男てどいつもこいつもアホなんかいな。バカな女に騙されて、口走る言葉にくらい責任持てや」

「オイ千尋。間違えるな、竜は騙されたんじゃねぇよ、乗せられただけだ」

「オメーも間違えるなよ」

確かに俺はアホなんだろう。しかし、このバカよりはアホじゃない。
庇うのか落とすのかどっちかにしろよ。

「だいいちさぁ、何でそんな女の口車に乗せられて頷いてるんよ。あんたそんなバカやったかいな」

「小学生なんざ良くも悪くもガキだろ?あの年頃は、男子が女子庇ったりしただけでからかわれるようなもんじゃん」

クラスの誰々は誰々の事が好きだー、みたいな。

今考えるといかにも子供だと思うが、あの頃はそんなんばっかりだったな。

「それが嫌で舞華を見捨てたみたいな?」

「別に見捨ててなんかねぇよ」

ただ……分かってなかった。

「……でも…そんな言葉ぐらいでここまで尾を引くような事態になるかなぁ」

不思議そうに怪訝そうに空を見上げた千尋。

普通はそうだろう。“かわいそう” なんて、どうってことない言葉だ。


でも。

「それ言ったのは……おばさんの葬式の時だったから」

ビュウと、強く風が吹き抜ける。

愚かな俺を嘲笑うように、強く、俺の髪を舞い上げていった。

「………」

千尋は半分納得、半分まだ疑問なようだ。

それはこいつは知らないから。アイツのおばさんの葬式に来てなかった千尋は、アレを知らない。

━━━瞼の裏に、鮮明に残るアイツの姿。

小さな身体で、必死に抵抗していた。


「━━まぁ、親が死んだばっかの時に言われたら胸くそ悪い言葉やな」

ボソリと呟かれた。