「あれ、千尋は━━……って、うあぁっ」

ふと千尋がいないことに気付いた秀人は、教室を見渡して情けない悲鳴を上げた。

「どうした」

「竜くーん、千尋ちゃん松島んとこにさっそくゴーしてるよ」

「ああ?!」

秀人の言葉にぎょっと振り返る俺。

見たら確かに千尋は松島舞華の元に行っていた。

「……マージかーよ…」

何してくれてんの千尋。

顔面蒼白の俺に、秀人は千尋を目を細めて見ながら、

「竜、千尋は空気読めないんじゃなくて知らないんだよ」

「……そうだな」

知ってたらするわけないわ、こんな無鉄砲なこと。

………千尋と秀人はよくても、俺が昔と同じように振る舞える訳ねーもん。