「えー、何や、舞華ってばそんなつまらんことで悩んどったんかー」
教室で私と秀人の帰りを待っていた千尋と竜。
その二人に私の気持ちを言った秀人。
…………奴は私に殴られて床に蹲っている。
どうやら、千尋も竜も私が何やら距離を置いていたことに気付いてたらしい。
分かってて何もしなかったとか。
底意地が悪いなとか思ったことは秘密にしておこう。
「やっだー、舞華ったらカーワーイーイー。
うちらに妬いてたなんて、女の子やーん」
からかい口調で私に抱きついてくる千尋。
…………だから嫌だったんだよ。言うの。
私のキャラじゃないだろうが。
赤くなっているだろう顔をしかめながら、声を低めて言う。
「別に、可愛くない。あと、私はこんなんでも女子だ」
「いや、誰も舞華を男だなんて言ってないから。言葉のアヤだろ、分かれよ」
「分かってるよ。照れ隠しだよ分かれよ」
「どうしよう千尋秀人。舞華がデレてる。貴重」
竜が戸惑ったような顔で私を見る。
デレてるってなんだ。普段の私はツンデレか。
「つぅかさー。そんなに気になるなら教えたげるよー。うちらの八年間ー」
「え?」
「舞華の居んかった日々?しょーもないことばっかやったけど。
小学校の頃とか。中学校のこととか?」
「…………」
「特に中学校のことは傑作やで?竜君の武勇伝と秀人のヘタレ伝説」
「「やめてくれ」」
「ふっ」
「ついでにあたしの伝説も話したるわ。中学の部活で一年二年の間で勃発した大戦争」
「おお、スゲーぞ舞華。千尋の部活のいざこざは周りからしたらドン引きもんだから」
「えげつすぎて正直聞かせたくない話だけどね…………」
「ははっ。じゃ喜んで聞かせてもらうよ」
本当に、つまらないことで悩んでいたものだ。
言葉にしたら、すぐに解決する事だったのに。
これから聞けるだろう楽しい3人の過去の話を楽しみにしながら、
今度は私の話も聞かせてあげようかな、と思った。