「ありがとうございましたっ!」
「イマイチ」
透き通るような声の目の前の女の子に、俺は、はっきりいう。
今日はオーディション。
俺たちのバンド、sky fly
の、新メンバー、いや、ボーカルのオーディション。
今までは、弟、佑月がやっていたが、声がいきなりでなくなったのだ。
「どこが悪いのでしょうか…。」
「声が合わない。もっと力強い声がいい。それから、まず、悪いところを聞く時点で、ダメ。」
「そんな…!もう一度、チャンスをください…!」
甘ったれてる。
「甘ったれてんな。たとえアマチュアだとしても、俺たちは客を喜ばせなきゃいけないんだ。楽しませて夢を見せる。それができねぇなら、やめろ。」
俺じゃなく、ドラムの桐生が言う。
俺たちのモットーは自分たちも観客も楽しませること。
ただそれだけだ。
「ライブは一回きりだからね。」
キーボードの、俊が言う。
俊はにっこりと笑って、女にお疲れ様と言った。
=もう、話は聞かないから帰れ。
「ありがとうっ、ございましたっ…」
その女は泣きながら退室した。
まぁ、今までの女よりは幾分マシな歌声だったがな…
「次で最後だね。」