for U〜名のない歌〜


みんなが、ルナを囲む中、

俺一人、ルナの曲を見ていた。

曲としてはバラード調。

歌詞としては、恋愛、だな。

俺たちが今まで歌ってきた曲は、

空や、翼、そんな言葉がたくさん入っていた。

前向きに、でもどこか後ろめたい。

もちろん、失恋もたくさんあった。

「夢と知りせばさめざらましを。」

百人一首にも、載っているこの和歌…。

なぜこの和歌を、題材にしたのか…

俺はあまり好きではない。

恋人を、思って寝たら夢に出てきた。夢だって知っていれば目を覚まさなかったのに。

現実で会いたくないのか、そう言いたくなる。

「あたし、夢と知りせばって言葉が好きなんです。一途な気がするんです。」

「…なるほどな。」

一途、か。

「てかさ、練習しよーよー!薫ーっ!」

「だな。」

俺は一人、ベースを持ち、楽譜をおく。

その横で美由がギターを持った。

それをみて、俊がキーボードに。

桐生は、ドラムへと駆け寄った。

それをみて、ルナは自分のギターを持ち、にっこり笑った。

「聞いてもらえますか?夢と知りせば。」

俺と佑月が頷くと、ルナは歌い出した。