「ルネ、大丈夫かい?」

「パパ、あたし大切なことを忘れている気がするの。誰か大切な人のこと。」

俺は、抱きついてきたルネの髪を優しく撫でる。

「聞きたいな。ルネの歌。」

俺はルネの気を紛らわすようにそう言う。

「うん!」

急に元気になって、ルナはピアノの前に座った。

♪君の花が尽きぬようにと
あたしはただ空に祈り続けるよ

久しぶりにあった君は大人になっていた
あたしなんか手に届かないほど
かっこ良くなっていて、
大人なっていて、
必死に背伸びをしようとがんばったの

でも、しょせん子供は子供
そう片付けられるのが日常
それでも君の態度が少し変われば
それは大人なったような気がした

前は髪の毛をくしゃくしゃにするまで
撫でていたのに、
少しぽんぽんと撫でるくらい
その変化が嬉しくてでも悲しくて

あたしはなにをおもえばいいの

気がつけば目でおってた
目が合えばそれだけで嬉しくて
そんな日々が続けばいいのにな
それだけは、願わせてください

君の花が尽きぬようにと
あたしにここで歌わせてください♪

久しぶりに聞いたルネの歌は
ライブハウスで聴いた曲。

「これは、」

「君の花!あたしの部屋にあったの。気に入ったから歌ってみたんだ!」

その曲は、記憶をなくす前の自分が作った曲だということに気づいていないようだった。

ルネが作った曲だと言えたらどんなにいいだろう…。