「すまん、薫。」
棗が、手術室の前で頭を下げた。
「なんで、棗が謝るんだよ。」
「俺、守れなかった。これ以上、穂高グループのせいで、傷つく人、増やしたくなかった。」
俺はうつむくしかなかった。
棗を恨みたくない。
でもやっぱり、穂高グループの、一人息子。
なんとも言えない。
ルナが刺された、その事実の方が俺の中で大きく響くんだ。
「ルネ……!……ルネがいなくなったら、俺はどうすればいいんだ……。」
ルナの名前をミカエルさんは必死に叫ぶ。
手術室の扉は、なかなか開かない。
「ルナ…。」
俊がルナの名前を呼ぶ。
「ルナは…、ルナは帰ってくるよ。また、笑って、心配かけて、ごめんって。」
佑月が、自分に言い聞かせるように言う。
「そうだな。ルナは、帰ってくる。」
俺も、声に出す。
自分に言い聞かせるように。
それだけを祈って。
「カルメン社長!」
棗はミカエルさんに、いきなり土下座した。
「お嬢さんを守れなくて申し訳ありませんでした。」
「こちらこそすまない、君に大役を任せてしまっていたね。」
どういうことなのだろうか。
俺は二人を見比べる。