穂高グループの息子は昔のバンド仲間の穂高棗だ。仲は悪くなかった。

今、あいつはアイドルとして成功している。

藤本財閥としても、取引しているグループなのに…。

「佑月、何失礼なことをいってるんだ。穂高グループは、取引先じゃないか。」

「それは、棗くんと薫が仲良かったからだよ。でも、最近穂高グループ、取引の量減ってるだろ?」

言われてみれば確かにそうだ。

棗と仲良かったときよりかなり減っている。

「前に棗くんと会ったんだ。」

佑月の声に俺は息を飲む。

「変わってなかったよ。俺が知ってた棗くんだった。アイドルだからって偉そうにもしなくて、俺を見て、佑月って声をかけてくれたんだ。」

でも、と、佑月は、つけ加える。

「笑ってなかった。何か恐れているようなそんな感じで、薫に謝ってくれって言われたんだ。」

俺に謝る…?

なぜあいつが謝るんだ。

何も悪いことしてないじゃないか。

「俺、最初は意味わからなかったけど、今ならわかるんだ。あぁ、ルナのことなんだって。棗くんは、ルナを守るために、あの噂を流して安全なフランスに帰らせたんだって。」