教室に向かう途中に例の階段がある

でもあたしには落ちる瞬間の記憶はないし、後ろ向きだったから、別に階段への恐怖はない


というか階段から落ちたっていう実感があんまないんだよね


『あたし、あんたなんか死ねばいいのにって思った』

校舎に入ってからずっと無言だった梅本が口を開いた

『地味なくせに男子と話してるし、悩みがなさそうなところもムカついてた』


……そんなふうに思ってたんだ

悩みなさそうって……当たってるけどさ

『でも…ホントは……あたしはあんたが羨ましかったの。あたしの欲しいものを全部持ってる…あんたが……』


あたしが羨ましい…?

梅本がそう言うなんて思わなかった


あたしとは全く違うタイプ

あたしは地味系、梅本は派手系。あたしは友達はかなり少数しかいないし、あんまり人と話すのは苦手、梅本はクラスの大半が友達で他のクラスにもたくさん友達が居る


あたしは恋なんて全くしていない。いいなぁ~と思った人がいても近付くこともできない、梅本は好きな人には積極的にアプローチできる


あたしの方こそ梅本を羨ましく思う部分はたくさんある


でもね…あたしは梅本になりたいと思ったことは一度もない


友達を簡単に裏切って、他人を傷つける


そんな人にはなりたくない


でも今の梅本はもうそんなことしない……そう思う


だって、やっと人の痛みに気付いたんだから


『あたしみたいになりたいなら、まずは友達を信じることだね』



そう言った時、教室が見えてきた