剣道の帰り道
御草は隣を歩く七瀬の顔を覗き込んだ


「浅葱、怒ってるの?」


そう聞けば、驚いたように眉を上げた七瀬が見返してくる
しかし、直ぐに複雑な表情で前を向く


「怒ってるわけじゃない」


抑揚の少ない淡々とした声
その喋り方も、一部のクラスメイトなどには生意気だと言われているが、御草は七瀬の声が好きだった


よく通る不思議な声だと思っている


「じゃあどうして不満そうな顔してるのさ。最近はいつもそんなだよ?」


七瀬はむっつりと黙り込む
そうなるともう喋らなくなることを知っている御草は、1つ息をついてそれ以上は何も聞かなかった


中学に上がったころからだろうか、七瀬はそんな表情を浮かべる事が多くなった


けれど、御草にはその理由がわからなかった