昇降口に着くと、上履きに履き替える。
当たり前の作業だけど…今のあたしは、トロイかも知れない。

ふと、自分の靴箱を見る。
「冬月 鈴」

達筆な字で、書かれている。
場所なんて変わってないのに、ただの名札だけで、こんなに新鮮になるんだ。

この字は、元担任の字では、ない。
昨日…FAXで見た。

新しい担任。
相田 憲一の字だ。

新鮮な空気を一瞬、吸ったあと…ゆっくり、階段へと向かう。

その時…聞き慣れた声で、あたしを、呼び止める。