一匹の黒猫が死んでいた。

毛並みは荒れ果て、まともに餌にありついていないのか痩せ細っている。

道端に放置されるように横たわり、手厚く葬ってやる者もいない。

空から見ていた鴉が、死臭を嗅ぎ取って群がり始める。

その肉を啄み、死肉を漁る。

鳥葬とも言える光景。

自然界の中では当然の如く繰り返されるあり様だが、その光景は無惨と言えば無惨で。

しかしその身を貪られる黒猫の瞳が、突然カッと見開かれる。

不穏なものを感じ取ったのか、一斉に群がっていた鴉達が羽ばたく。

…黒猫は焦点の定まらぬまま、ただ一点を見つめていた…。