それなりに整った彼女の顔にも、それが散っている事に気が付いた。



「……汚い。」



腕で拭おうとするが、少し戸惑った。



三秒間の思考の後、死体のポケットに入っていたスカーフを使った。



「本当に汚い。」





彼女ーー香坂千里(こうさかちさと)は、潔癖性というわけではないが、人の血肉を毛嫌いしていた。




「(…帰ったらシャワー浴びよう。)」




小さな決断をして、死体を素通りして千里は歩き出した。