いつか見た、あのキャンパスがふと浮かぶ。

あれを……描いてるのかな。
いくつもの線で描かれた優しいタッチ。

まだ描き始めだったのか、それがいったい何の絵なのか、あたしにはわからなかった。



会いたいな、なんて。
ふと思った。

家で顔を見なければ、学校なんてもっと見かけない。

時々今みたいに、美術準備室を眺めてはカーテンが揺れてるのを見て、あああそこにいるんだって……。



「……」


って、あたしなにをそんな気にしてるんだ。
洸さんなんてどうでもいいのに。
なにしてようがあたしには関係ないし、それに……。

今の生活でちょうどいいじゃん。


そうだよ。今の状態がベストだから、洸さんは何も言ってこないんだし。


フルフルと首を振って、顔を上げた。