洸さんとの秘密の共同生活が始まって、早3ヶ月が過ぎようとしていた。

無謀に思えたこの生活も、なんとか平穏に、何事もなく?過ぎていて……。
なんだかんだ、すっかりなじんでしまった。


それもそのハズ。
だって、まるで一人暮らしの感覚なんだもん。

一緒に住んではいるけど、この部屋で洸さんに顔を合わすなんて事は滅多になかったから。

朝は早くから学校へ行ってしまうし、帰ってくるのだってあたしが部屋へ引っ込む時間になってからだ。
美術講師って、そんなに忙しいの?
そもそもいつも何を描いてるの?

聞いてみたいのに、そもそも洸さんに会えないんだから聞けるはずもなかった。


だから、留美子から一緒に住んでるのになんの進展もないのかって聞かれるんだけど……。
なにも言えないよ~……、進展もなにも、会えてないんだから!
それに、あたしそんなんじゃないし。


そんなんじゃ……。
あーもう、ばかばか。


「はあ……」

もとはと言えば、牧野が好きな留美子に疑われないための嘘だったはずが……。

はあああ。





「……」


昼下がりの教室。
眠気を誘う、あたたかな日差しが降り注ぎ、シンと静まり返る教室に響くのは、先生が紡ぐリズミカルなチョークの音と、ノートを滑る、ペンの音だけ。

いくつもの英文が並んだ黒板から、窓の外へ視線を投げた。

頬杖をついて、ため息を零す。
洸さんがいるはずの美術室がよく見える。

最近は肌寒くなってきて、窓を開けておくのも気が引けるっていうのに。
しっかりと開け放たれたその窓の向こう側で、真っ白なカーテンが相変わらずのんびりと風をうけて揺らめいていた。



「はあ……」


ずーっと入り浸って、美術室で何してんの?

……洸さん。