秋がいっそう深まったこの頃。
深く息を吸い込みたくなるような澄みわたる青空。
ときどきひんやりとした風が頬を撫でて、色づいた落葉樹がひらひらと舞い、黄色の絨毯で街に彩を添えている。


マンションのアプローチにあるシンボルツリーのカエデの木も日に日に鮮やかな赤に染まりつつある。

紅葉とは少しだけ葉の形が違うみたいだな……。
落ち葉を拾いあげ、そっと頭上の木を見上げた。

見上げた先は、よく言えば味のあるマンションが、秋空の下太陽の日差しを浴びて、優然とあたしを見下ろしていた。



「……」



最近、洸さんに会ってないな。

前まであたしが起きるまでは居て、のんびりコーヒーを飲んだりしてたのに。
小さく息を吸い込んで、マンションに背を向けた。


学校へ行くと、その足で美術室へ向かう。


ただの気まぐれ。
洸さんが、ここんとこ学校にこもってやってるのか、少し興味がわいちゃった。
それに。教室いってもまだ誰もいないし、思ったより早く着いちゃったしね。

あたしが美術室へ行く理由は、それだけだ。


まだ人の少ない校舎の中は、静かで。
廊下を歩くあたしの靴音が、やたら廊下に響き渡る。



美術室の前まで来ると、その扉がほんの少し開かれていることに気付いた。


……カラカラ