「ねえ、海ちゃんはやっぱり翔の事好きなの?」
「……」
留美子の突然の質問に、わたしはしばらくフリーズしてしまった。
「え?」
一気に顔中の筋肉が引きつったのがわかった。
だめだ。留美子には知られないようにしないと。
昨日で終わったんだから。
洸さんの腕の中であんなに泣いたじゃない。
あの時、涙と一緒にわたしの想いは全部洗い流したんだ。
止まってしまった手を再び動かして、レンゲを口に運ぶ。
お粥は、お米の味もしなくなっていた。
「……ふふ。どうしたの?急に」
「……急じゃないよ。本当は前から気づいてた。海ちゃんが翔を好きな事」
「なんの話? 好きなわけないじゃない」
あははって笑うわたしを、真剣な眼差しで見つめる留美子。
彼女の口から、何が語られるのか、わたしにはわかる。
留美子に心配させたくない。
遠慮もしてほしくない。
「そ、それにわたしの好きなひと、別の人だし?」
「え?」
別にいる。
その言葉に反応した留美子が、目を見開いた。
ついでにわたし自身も。
「誰?」
「え」
だ、誰って……。
誰だろう?
どうしよう……真っ直ぐにわたしを見つめる留美子の視線が突き刺さる。
手にしていたお粥をじっと見ながら必死に考える。
「えっと……誰って」
「うん。誰?」
「……………。……洸、さん」
咄嗟に浮かんだ名前。
思わず口をついて出た言葉にハッとした。
洸……さんって、わたし……。



