恋するマジックアワー



―――次の日


鏡の前で、自分の姿を睨んでいると、部屋のドアをノックする音と一緒に、洸さんの声がした。


コンコン


「海ちゃーん、今ちょっと話せる?」



洸さん?
洸さんがわたしの部屋を訪ねてくるなんて珍しい。

はじめてじゃない?


わたしは慌ててドアを開けた。


――ガチャ!


「わッ」


洸さんもドアノブを掴んでいたみたいで、いつもより軽い力で開いた事に、バランスを崩しそうになってしまった。


「っと。 ごめん大丈夫?」

「うん、へーき……」



とっさにわたしの体を支えてくれた洸さん。

目の前に真っ白なシャツが見えて、慌てて体を起こした。




「ご、ごめんなさい!」



チラリと顔を上げると、休日モードの洸さんが少し驚いたようにわたしを見下ろしていた。



「……洸さん?」

「ああ、いや。 出かけるとこだった?」



今戻ってきました、みたいな顔で瞬きをした洸さん。


「うん、お祭り。行ってきてもいいかな?」

「ああ、そっか。今日はお祭りか……。ん、もちろん。行っといで。
あ、でもあんま遅くなるなよ? 外の世界は海ちゃんが思ってるよりも危険がいっぱい……」


がおーって感じで片手でオオカミのポーズをする洸さんに、思わず笑ってしまう。


「っふふ。はーい。気を付けます」