それから、帰ってくる時間帯の違う洸さんとは顔を合わせることなく一週間ほどたった、金曜日の放課後。


鞄にノートを詰め込んでいると、目の前に影が落ちた。



「うーみちゃん」


まるで跳ねるような声につられるように顔を上げた。
見ると、ニコニコと上機嫌の留美子。


「嬉しそうだね。何かあった?」

「ふふふ。ね、コレ行こう!」


ジャジャーンと効果音と一緒に、目の前に紙が差し出された。





「……お祭り?」




真っ赤な文字で、『秋祭り』と書かれたパンフレットだ。
来年もまた無事に季節が巡ってくるように、そんな願いを込めて行われるお祭り。




「うん。明日の夜!一緒に行こう?浴衣着て。ね?」

「えぇ、浴衣?」



あからさまに嫌そうな顔をしたあたしを見て、さらに楽しそうに笑う留美子。



「海ちゃん美人だから、絶対似合うよぉ。あたし見たい!」

「え? あたし留美子の為に着るの?」

「あたしも着てくし!ね?」



うーん……、浴衣かぁ。
もう何年も着てないなぁ


……て。



「……牧野とは行かないの?誘われたでしょ?」


何でもない事のように、かばんのチャックを閉めながら言った。

少しの沈黙。

気になって顔を上げると、首を傾げた留美子の顔。


「なんで翔?」


え?