いまだに小さな言い争いをするふたりに気づかれないように、小さくため息を零す。



「まぁまぁ。 まだ提出までに時間あるし、ふたりで移しちゃいなよ。わたしはいつでもから」

「海ちゃ~ん」



さらにギュッとその腕に力が込められた。



「はあ……。ほんと、立花はるみに甘いよな」

「牧野に言われたくないんだけど」



そう言った牧野をじろっと見て、わたしはさっさと教室へ向かった。




毎朝こうだもんなぁ、あのふたり。

早く、付き合っちゃえばいいのに……。




教室の窓際。

その一番後ろがわたしの席。



「はあ……」


鞄を机にひっかけてガタンと腰を落とすと、自然とため息が零れた。


なんか疲れたな……。

もっと前もって引っ越しすませておけばよかった。



そんな事を思いながら、窓の外に視線を移す。



大きく開け放った窓から、柔らかな風が吹き込んでいる。

無造作に引かれたカーテンが、フワリフワリとダンスしているのをぼんやりと眺めながら、今日も暑くなりそうだなぁ……なんて考える。


どこまでも続いていく真っ青な空とぽっかり浮かぶ雲を仰いで、ふとグランドに視線を落とした。


……。


ん?

なんだろ……。



視力は悪くない。

それでもわたしは、よく見ようとグッと目を凝らした。



L字型に建つ校舎。

ここからは向こう側が見える……んだけど。



あれって……