それからのことは、あまり記憶にない。
せっかくおいしくて有名なパンケーキのお店に行ったのに。
なにを食べても味なんかわかんなくて、ただ口の中を滑っていくだけだった。
三嶋くんが心配して声をかけてくれた気がするけど……。
悪いことしちゃったな。
「……はあ」
無意識にため息。
あーもう、もやもやする!
ーーーーー……
ーーー……
西の空に太陽が沈み、空はいつのまにかオレンジからビロードに染まろうとしていた。
黄昏時の曖昧なこの時間は、なぜか胸がキュっと切なくなる。
それは、あの日を思い出しちゃうからなんだってわかってるんだけど。
去年のクリスマス。
洸さんとふたりで見た、真冬の海。
そして……。
あの時のキスは、洸さんの気の迷いだったのかな。
てか、そうだとしたらひどくない!?
切なくて、喉の奥からせりあがるような言い知れない感情のあとにやってくるのは、たぶん怒り。
あたし、まだ怒ってるみたい。
あんなこと、冗談でするなんて本当に最低最悪の大人だって。