保健室での一件があってからなにか変わったというと、実はそうでもない。

意識しちゃってるのは、相変わらずあたしだけ。
リビングで会う洸さんも、
学校で会う沙原先生も、

なにもかも、今までとかわらない。


やっぱり、あの時は本当に心配してくれてただけだったんだ。
洸さんにとって、あたしは同居人兼生徒であって、他のなにものでもないんだなぁ。


わかってたことじゃん。
なにを今更期待して、それが違ったからって落ち込んでるんだろう。

洸さんの言動に一喜一憂(いっきいちゆう)してバカみたいだ。



『妹』でもいい。
それが洸さんにとって特別な存在だというなら。



「ああもう! お花畑脳どっかいけ!」


「お花畑?」



隣から急に声がしてハッとする。

ハッとすると、目の前には留美子。
机を囲うように、牧野とバスケのキャプテンこと杉浦くん。
隣には三嶋くんがいて、それぞれ不思議そうにあたしを見ていた。


「沖縄に花畑ってあったっけ」
「そういえば、ひまわり畑あったよね? ちょうど見ごろなんじゃない?」


そう言って笑ったのは、高橋なつみちゃんと井浦京子ちゃんだ。



そうだ、今は修学旅行の班決め真っ最中だった。

とりあえずあたしたちは、女子4人と、男子3人でまとまったんだった。


数人で囲う机の上には、乱雑に置かれたパンフレットたち。
自由時間どうしようかって話をしてたんだった。


「そうそうひまわり!見たかったんだ」

 
うちの高校は、修学旅行を3年生の6月の終わりに行く。
帰ってきたら期末試験もあって、割とハードなのだ。
夏休みから本格的に受験シーズンに入るだろうし……。


……進路かぁ。
あたしはどうしようかな。