「立花?」


そこから顔を覗かせたのは……。


「あ、三嶋くん!」


ベッドに腰をおろしたわたしを見て、ゼッケンをつけたままの三嶋くんは廊下から心配そうに声をかけた。


「……具合どう? 大丈夫なの?」

「たんこぶは出来ちゃってるけど、平気だよ。 けど、どうして三嶋くんが?
試合は……」

「勝ったよ」

「え」

「俺たちのクラスが優勝」

「ええっ!すごい」


思わず立ち上がる。

もちろんたんこぶは少しだけ痛い。
だけどそんなことはもうすっかりどこかへ行ってしまった。

それくらい驚いたんだ。


「今少し休憩中で、そんで授賞式。だから迎えにきた」

「え、そんな……わざわざありがとう」

「本当はもっとはやく様子見に来たかったんだけど、江藤がなかなかオーケーくれなくてさ」


おかしそうに笑う彼は、さっきまでコートの中にいた人物とは思えないほど爽やかな笑顔をわたしにむける。
汗で濡れているその流れる髪さえも、爽やかだ。

まぶしい……。
さすがどの部にも入らないのに、どの部も欲しがる幽霊部員。
ここまで高スペック男子だったとは。
体育館の黄色い歓声のほとんどが三嶋くんの名前だったことを今思い出した。


そんな三嶋くんが、わたしなんかを迎えに来てていいのかな。
保健室まで運んでくれたのも彼だって聞いたし。

なにかお礼しなくちゃな。



「どう? 行けそう?」

「あ、うん。今行くね」



言って立ち上がる。

そうだ、洸さん!
わたしたちの話に口を挟まずにいてくれた洸さんに慌てて向き直る。


「あ、えと、沙原先生どうもありがとうございました。失礼します」


両手を揃えて頭を下げた。
そのまま、踵を返して洸さんに背を向けた。


でも…………。



ーーーパシン。








手首をぎゅっと引かれた。
そのままの流れで振り返ると、洸さんがわたしの手を引いていた。