「顔色は良さそうだけど……。とりあえずもう少し冷やしてて」

「ありがとう」


(ひょう)のうを手渡され、あっという間に洸さんはカーテンの向こう側に消えた。



「……っぷはぁ」



思わず胸に手をやり、盛大に息をつく。
やばい。無意識に呼吸浅くなってた。

勝手にドクドクと鳴る心臓を落ち着かせたくて、ぎゅっと目を閉じた。
顔色がよく見えたのは、たぶん頬に集まったこの熱のせいなんだってわかるから、無性に悔しくなってしまった。



「……そうだ試合! うちのクラスどうなったか知ってる!?」

「まだゲーム中だよ。 立花が運ばれてきてから少ししか時間たってないから安心して」

「……そう」


うう。
みんなの足引っ張りたくないのに、結局迷惑をかけてしまった。

わたしがあの時他のことに気をとられてたばっかりに。
ちゃんとコートを見てたらこんなことにはならなかったはず。



「あの、ところで誰がここまで運んでくれたのかな」



申し訳なさと罪悪感でいっぱいだ。

どの先生だろう。
カーテンの向こう側でなにやらカチャカチャと音がする。
その音を聞きながら、ベッドに体を横たえた。


「ああ、たしかなかじま、たじま……こじまじゃなくて、」


え?

体が痛いのなんてすっかり忘れて、横になったばかりのあたしは飛び起きる。
ま、まさか……。


「………………、みしま?」

「そうそう、三嶋だ」

「…………」




うわぁぁ、三嶋くんか~~~~!!!

がばって感じで思わずうな垂れてしまう。
とんだご迷惑をおかけしてしまった。

コートの中で縦横無尽(じゅうおうむじん)に動き回る三嶋くんを思い出し頭を抱え込んだ。


試合も中断させちゃったんだろうな……。
うわぁ……うわああ。



「海ちゃん」



その時、すぐそばで声がして慌てて顔を上げた。