恋するマジックアワー


……はっ!


気が付くと、そこは見慣れない天井。
どうやらわたしはベッドに寝かされているらしい。

真っ白なカーテンと、薬品独自の香りにここが保健室なんだと気づく。
反射的に体を起こすと同時に、あちこちに痛みを感じた。



「いてて」


なにこれ、頭痛い!



「あれわたし、バスケの試合見てて、それで……どうしたんだっけ」

「ボールが顔に当たって、意識飛ばしちゃったそうだよ」



わたしのつぶやきに応えるようにベッドを仕切るカーテンが開いた。
顔を覗かせたのは……。



「洸さん……!?」



寝ぐせだらけのぼさぼさの髪。
野暮ったい眼鏡に……、そのだっさいジャージはなに!?


「な、なんで洸さんがいるの?」

「保健医の先生が産休で、代わりに俺が。ほら、見せて」

「っ」


あっという間に距離を詰められて、洸さんの手が頬に触れた。


…………。


「すんごいたんこぶだな。 気分はどう?」

「へ、あ……」


あ、あ、顎を持ち上げる必要あります!?
これじゃあまるで……。


光に反射した洸さんの眼鏡が、その瞳を隠す。
どこ見ていいかわかんなくて、オロオロと視線をさまよわせる。
「だ、だいじょうぶ、です」なんてもごもごと言うしかなくて……。


ダメダメ!
意識しちゃダメ!

洸さんのこの無神経な距離の取り方なんて、慣れてるハズよわたし!
ここは無になるの。
心を無にして。