「なんで……」
どうしてこれが、ここに?
あの時、先生である洸さんに没収されてしまったはずだ。
洸さんははっきり、受け取れないってそう言ったのに……。
どうして?
一体どれくらいそうしていたんだろう。
「海ちゃん?」
すぐ後ろで声がして、息を呑んだ。
リビングから差し込む光が影をつくり、チェストに触れていた手元を遮る。
そっと振り返ると、案の定洸さんはそこにいて、肩口から覗き込んでいた。
「洸さん……これ」
少しだけ、声が震えてしまった。
だって、体中で渦巻いてる感情でどうにかなりそうだ。
期待と、不安。
理由を知りたいけど、知りたくない。
でもやっぱり……って。
引き出しの中に視線を落としていた洸さんは、ゆっくり瞬きをしてからわたしを見下ろした。
ちょっとだけバツが悪そうに。



