「ビックリした……。あのね、用があって来たのなら、ドアを開ける前にまず声をかけなさい」
「……す、すみません」
見上げた先の洸さんは、野暮ったいボサボサ頭で。
わたしを受け止めた衝撃で傾いたメガネをグッと押し込むと、そっと肩を押し、距離をとった。
「で? どうしたの」
「…………」
ため息まじりの言葉。
すっごく迷惑そう……。
メガネと前髪でその表情はわからなくても、雰囲気がそう言っている。
思わず怯んでしまいそうだ。
―――でも。
鉛のように動かなかった足を何とか動かして、すでにキャンパスに向かい作業をしている洸さんとの距離を詰める。
「あの、沙原先生」
「んー?」
「えっと……こ、これ!お腹すいた時にでも食べて欲しいなって……だから、その、もらってほしくて……あの、受け取ってください!」
言った!
あの言葉を言わせてもらえなくても、それでも……!
ギュッと目を閉じて差し出した小さな紙袋。
緊張で小刻みに震えてしまう。
洸さん、お願い……!
受け取って!



