「静かに出来るな?」
掠れた声で、そう囁かれ
唇に触れた息に、目眩がしそうだった。
必死にコクコクと頷いて見せると、目の前の男は口角を上げて満足げに笑った。
「――よし。いい子だ」
「……」
顎から離れた彼の手が、ポンッと髪に触れた。
もう、なにがなんだかわからない。
掴まれていた手首もスルリと解放されて、なぜか熱だけが残った。
茫然としているわたしはそのままに、彼はドサッとソファに腰を落とした。
それからグシャグシャと無造作に髪をかきあげて、チラリとわたしを見た。
ビク!
ただ見られただけなのに、小さく肩が震えて、まださっきの余韻が残っていることが無性に恥ずかしくて俯いた。
「もう1度聞くけど、砂原って言ったよな?砂原愛」
「へ?……あ、はい」
唐突に質問されて、慌てて頷いた。
それから彼は大げさにため息をつくと、まるで吐き出すように言った。
「それ、俺の姉貴だわ」
「え……」
えええええッ!!!



