恋するマジックアワー


煌々と明かりのついた教室の中はもぬけの殻だった。
少しだけ開けた扉の間をすり抜けるように教室に入り込む。


ドクン ドクン


心臓が加速する。




美術準備室のドアノブをギュッと握りしめ、深呼吸を繰り返した。


き、緊張する!

大丈夫。出来る。わたし、出来る。

暗示をかけるように何度も何度も自分に言い聞かせる。



大丈夫。大丈夫……、



その時だった。




―――ガチャ



握りしめていたドアノブが勢いよくまわり、さっとドアが開いた。


「うひゃあ!」

「おっと……って、立花?」


濃厚な油絵の香。

わたしはまた、洸さんの胸の中に飛び込んでいた。