恋するマジックアワー


…………。


いやいやいや。
わたしには関係ないし?

関係ない関係ない。



「海ちゃん、今日帰りどっか寄って行く?」



去って行く担任の姿をぼんやりと見送っていると、マロンブラウンの髪がひょいっと視界に飛び込んだ。



「ごめん留美子……。今日はやめとく」

「……、海ちゃん?」



どうしたの?って首を傾げる留美子に簡単に事情を説明する。
「ごめん、またメールする」とだけ返し、わたしは鞄を引っ掴んで駆け出していた。


行ってどうするかなんて、今は頭の中から飛んでいた。

ただ、洸さんが心配だった。





――ガチャガチャ……ガシャン!


「えっ」


チェーンしてる……。

久々に帰ってきた部屋の前で、茫然とする。

少しだけ開いた隙間から中を覗き込むと、昼間だというのに部屋は薄暗かった。

リビングの扉が少しだけ開いてる。
シンと静まり返っている室内に不安がよぎった。


洸さん、……生きてる?


意を決してチャイムを鳴らす。


――ピンポーーン


「…………」


どれくらい待ったんだろう。
応答はない。


――――ピンポーーン ピンポーーン ピンポーーン!


なかばムキになっていた。
もう一回押そうとしたその時だった。



ドン!