見上げると、口元を手で覆った彼が眉間にグッとシワを寄せてなにやらブツブツ言っている。
?
首を傾げている彼から一歩、また一歩離れわたしはオズオズと声をかけた。
逃げるなら、彼の意識がそれてる今しかない。
「あのぉ、ほんとにすみませんでした。失礼します」
ペコッと頭を下げて、玄関へ向かって歩き出したわたしの手が、いきなり掴まれた。
「ひゃっ!」
ぎゃあああ!
「は、離してっ!」
掴まれた腕を引き離そうと、ジタバタもがく。
でも、強く掴まれた手は離れることはなくて、それどころか強くなる。
……痛いほどに。
「いたっ、痛いっ!やだっ……」
……パパっ
…………パパ、助けて……!



