「海ちゃーーん、そろそろ行ける?」


声と共に、勢いよく扉が開く。
顔を覗かせたのは、制服姿の留美子だった。


「うん、今行く」


鞄を持つと、留美子と一緒に家を出た。

煉瓦造りの大きな一軒家。
あたしが今いるのは、留美子の家だ。





あれから……。
洸さんと暮らす、あの部屋には帰れずにいた。

途方に暮れていたあの日。留美子がうちにおいでって言ってくれて今にいたる。

新しい年も迎えていて、今日から新学期だ。