ドキン ドキン



長い前髪の向こう側の、アーモンドの瞳と視線が絡み合う。



怖い。

逃げたい。

その唇からこぼれる答えを、あたし聞きたくない。



でも……
でもそれ以上に負けたくない。



だって、悔しい。





洸さんには、素敵で魅力的な大人の彼女がいる。
それにくらべ、こんな子供みたいな自分。


……悔しいよ


だって……だって……。 きっと敵わない。




まっすぐにこちらを見下ろす洸さん。
その視線から逃げたいのを必死に我慢する。

唇が震える。

あたし今、すごく情けない顔してるんだろうな……。



心臓の音が耳もとで響く。

お互いの息遣いが聞こえそうなほど、ただ黙って見つめ合う。


ほんの数秒だったのかもしれない。
でも、あたしには永遠に感じた。

押しつぶされそうな空気を先に破ったのは、洸さんだった。

その視線を一度足元に向け、小さく息を吸い込んだ洸さんはまっすぐにあたしを見つめた。



「――立花。 本当にごめん。
俺の安易な行動で、お前を傷つけた。許してほしいなんて思ってない。
一緒に住むのが嫌なら、俺は出て行ったっていい」

「……」



洸さんの言葉が、頭の中をすり抜けていく。


ずるいよ……。
家賃は半分って、そう言ったのは洸さんだよ?
あたしは、謝ってなんか欲しくないのに……。

ジワリと視界が滲む。
瞬きをしたら、それはあたしの体を零れてしまいそうだ。




「だから……」

「洸さん」



まだ謝罪の言葉を連ねようとする彼の言葉を遮るように口を開いた。

あたし、あたしね?



「あたし……!洸さんのこと、……っ、」

「 立花 」




…………え