勝手に身の危険を感じて、ギュッと腕の中に鞄を押し込んでソファからサッと離れた。
やっぱり彼はわたしの背後にいて、ジッと見下ろしている。
チラリと見上げると、わたしよりもずいぶん高い位置に顔があって。
無造作にセットされた真っ黒な髪が、蛍光灯の光に照らされて、キラキラ反射していた。
真っ白なシャツに、カジュアルなハーフパンツに身を包んだ彼は見た感じ、20代くらいのようだった。
……う。
うわわ。えらい、イケメンですね……。
まるでモデルのような容姿に、整った顔立ち。
その彼が、もの凄く怖い顔でわたしの事を見つめている。
これが、この部屋の住人。
いたたまれなくなって、一歩、また一歩と後退りする。
「……あの、わたし。本当に部屋を間違えて……。沙原さんのお宅だと思って……その、本当にごめんなさいっ。見逃してくださいっ」
耐え切れなくて、何度目かの謝罪をした、その時だった。
今まで氷のように凍てつく眼差しでわたしを見下ろしていた彼が、小さく息を飲んだのがわかった。
「沙原って……もしかして沙原、愛?」
―――え?



