恋するマジックアワー


キョトンとしたわたしを見て、洸さんは楽しそうに笑うと柵に腕を乗せて、海と空の境界線を眺めた。


「昼間でも夜でもない、太陽が沈んでからの20分だけ。世界が魔法にかかったみたいに、いちばん美しくなる時間帯を、魔法の時間。マジックアワーって言うんだ」

「……魔法の時間……」



確かにそうかも。

心の中の全部、浄化されちゃったみたい。


「……洸さん。ありがとう、連れてきてくれて。こんなクリスマス、初めて……」

「俺のお気に入りの場所だから、誰にも内緒な」

「ふふ。うん、誰にも言わない」


頬杖をついて、同じ目線になった洸さんの顔を今度はわたしが覗き込む。
強い風に、乱れた黒髪が揺れる。

目が合うと、自然と笑みが零れた。


トクン トクン


波の音とリンクして、胸がドキドキする。

わたしを見る洸さんの視線が、すごく優しくて。
いつもと違うから、どうしていいかわからない。


寒いから?
すごく、距離が近い……。

気が付けばわたし達は寄り添うように立っていて、洸さんはビロードの空をいつまでも眺めている。

その横顔を見つめいると、洸さんが顔を上げた。


ドキ!