恋するマジックアワー


「到着」


そう言って洸さんは、さっさと外へ出て行ってしまった。
わたしも上着をもってその後を追う。

瞬間、吹き付ける風と一緒に、潮の香りに包まれた。




「わあ……!」




眼下に広がるのは、どこまでも続いている大海原。

空も雲も海も太陽も、そしてあたし達も全部全部、オレンジ色に染まった世界。

高い丘の上。
そこには、まるでお城みたいな小さな灯台があって。
暗くなり始めている海に、光を灯していた。


「海ちゃん」


灯台の下で洸さんが振り返った。
慌てて駆け寄ると、スッと左手が差し出された。


え?

キョトンとして、その手を食い入るように見つめる。


「足場悪いから、早く」

「……うん」


嘘……。

繋いでいいの?

差し出された手に、そっと自分のを重ねるとすぐにギュッと力が込められた。

なにコレなにコレ、これも夢の続き?


肌を刺すほどの冷たい風。
それなのに、わたしの体温は急上昇。
顔から湯気が出そうだ。

洸さんはわたしの手をとって、すぐに歩き出した。

連れられて行ったのは、灯台がある丘を降りた見晴台だった。
階段を降りた先に、海に少しだけ飛び出したその場所は、上に比べて風が弱い。

手すりにわたしを誘導すると、洸さんはすぐに繋いでいた手を離した。


あー……もう離しちゃった……。

しゅんとうな垂れていると、洸さんが「間に合った」とつぶやいた。


「ほら、始まる」


え?