恋するマジックアワー


――――……
――……



「あの……どこ行くの?」


洸さんの運転する車に乗って、国道をひた走る。


「さあ。どこでしょう」

「えー?なにそれ……」


チラリとあたしに視線を向けて、まるで子供みたいに無邪気な笑顔を見せる洸さんに、頬が火照る。

25日の今日。
日曜日って事もあって、国道は少し混んでいた。

車はいつの間にか住宅街を抜けて、林道を進んでる。


「海ちゃんって休みの日はほんといつまでも寝てるよな。若い子の特権ってやつか」

「……洸さんは?」

「ん?」

「休みの日、いつまで寝てるの?」

「…………昼」

「ほら!変わんないよ」

「あはは」


他愛のない話で盛り上がる。
嬉しくて、死んじゃいそうだよ……。

車内の時計は、すでに3時を回っていた。

ほんと、どこに行くつもりかな……。
せっかくのクリスマス。
洸さんはあの人といるんだと思ってた。

運転する洸さんをそっと盗み見る。
肘掛けに腕を乗せて、楽な姿勢でハンドルを握るその横顔は、いつも見てるのに、また違う人みたいだ。

そんなあたしに気付いた洸さんが、視線だけを向けた。


ドキ!


慌てて逸らすと、いきなり頭に手が乗っかった。


「なんだよ。悩み事?」

「わわ」


グシャグシャとかき混ぜられて、ボサボサになったあたしを見て、洸さんは目を細める。

もぉ……。

悩みって、あなたの事だってば。

そうやって、容赦なくあたしのテリトリーに入ってくる洸さん。
今みたいに心の中もかき乱して、ふとした瞬間一線を引く。


振り回されてる。
洸さんの行動に、その言葉に、一喜一憂してる。

頭の中混乱して、だけど、わけもわからないまま、どんどん気持ちだけ大きくなる。


「なんかこれって……デートみたい」


そう言ったわたしに、洸さんはパチパチと瞬きをした。
それから呆れたように笑うと、「生意気」ってそう言った。