「うーみちゃん。お疲れさま」


晴れやかな顔をした留美子が、飛ぶように現れた。
留美子はテストも問題なかったみたい。


「ねね、今日このあと暇?」

「暇だけど、どうしたの?」

「付き合ってほしいところがあるんだぁ」


キャラメル色のフワフワのボブが、揺れて留美子は照れくさそうに笑った。

と、その時だった。


「立花ぁ、呼んでるぞ」


クラスメイトの男子が、教室の入り口から声を張り上げた。


へ?


見ると、そこには見覚えのない男子生徒がいて。
目が合うとペコッと頭を下げた。


「ヒュー」

「きゃあ!A組の……」


クラス中が、ザワザワと騒ぐ。



「……誰?」

「さあ……」



留美子が明らかに不審そうな顔をする。

わたしはその中を潜り抜けながら、彼の前に行く。


「あの、なんですか?」


背中に好奇の視線をビシビシ感じ、なんだか居心地が悪い。

目の前に彼は、わたしから視線を逸らすと「あの……」と俯いた。



「俺……A組の三嶋サトシって言います」

「はあ……」



みしまさとし?

あー、なんかどっかで聞いた事あるかも。
なんだっけ?


「立花海さん、俺と付き合ってくださいッ」

「はあ……えええッ!?」